前穂高岳 屏風岩東壁雲稜ルート(北アルプス)

★山域:前穂高岳 屏風岩東壁雲稜ルート(北アルプス)

★日付:2026.10.10(土)~12(月)

★天気:3日間共晴れ

★山行形態:山岳会山行・アルパインクライミング

★参加者:山宮(L)、木村

★コース:上高地バスターミナル→横尾(テント泊)→横尾岩小屋跡→(横尾谷を渡渉後に1ルンゼを登る)→T4尾根取付→(T4尾根登攀)→T4→(雲稜ルート登攀)→雲稜ルート5ピッチ終了点→(懸垂下降)→T4尾根取付→(1ルンゼを下って横尾谷を渡渉)→横尾岩小屋跡→横尾(テント泊)→上高地バスターミナル

★ルート状況(ルートグレードは参考にしたトポ図からで、あとは山宮の個人的な感想です。参考にしたトポ図は昔のものです。)

※下記URLは過去2回のレコ
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1534410.html
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2025843.html

【岩小屋跡~横尾谷渡渉地点~1ルンゼ~T4尾根取付】
・岩小屋跡の案内板から一般登山道を外れ沢の方へ行くとすぐに横尾谷の渡渉です。自分の好きなところを渡渉すればいいと思いますが場所によっては岩がヌメっていて滑るので注意が必要です。
・1ルンゼの岩はけっこう動くので足をくじかないよう注意して歩きましょう。また落石に注意して間隔をあけて歩いたほうがいいと思います。

【T4尾根】
・T4尾根は最初の2ピッチのみロープを出してスタカットで登りました。

1P スラブ(Ⅳ、30m)(木村リード)
・特に問題なく登りました。残置中間支点は豊富にあります。終了点はハンガーのある終了点を使用。(残置スリング類が多くスッキリしてない。)

2P フェース~凹角(Ⅴ-、40m)(山宮リード)
・特に問題なく登りました。残置中間支点はそれなりにあります。カムも使えます。(1箇所使いました。)終了点はハンガーのある終了点をスルーして残置スリングのある灌木にスリングを巻いて構築。
・ロープスケルは47~48mぐらい?50mロープでギリでした。(終了点を灌木で取ったので)

3P 土のルンゼ(100m)(フリーで登る)
・草や枝などを積極的に使って確実に登りました。

4P チムニー~スラブ(Ⅲ、40m)(フリーで登る)
・問題なく登れました。(岩が濡れてなければフリーでも問題なく登れますが、KHは残置ロープを使って登ってました。)

【屏風岩東壁 雲稜ルート(4級、5.9、A1(5.11c))】

・全体的に残置中間支点はしっかりしていると思います。
・おおよそ残置支点に導かれる感じで登れるのでルーファイはそれほど難しくありませんが、2P目スタートのピナクルテラスから右上するところは少しわかりずらいかもしれません。(ここ登るの?と言う感じです。)あと4P目・5P目の終了点は複数ある感じでどこで切ってもいいですが、ベストの終了点はロープの流れや強固さを考慮したところが一番です。(それがどこかと言われても自分で見て判断してください。)

1P コーナー~小ハング(50m、Ⅴ)(山宮リード)
・T4~ピナクルテラスまで。
・T4は広くて快適です。(ビバーク適地)
・特に問題なく登れました。
・カム使えました。
・終了点はハンガー2つ。
 
2P 小垂壁を右上~フェース~バンド左上(40m、Ⅴ+)(山宮リード)
・ピナクルテラス~扇岩テラスまで。
・扇岩テラスの扇岩が地震の影響で無くなってましたが、相変わらず広くて快適です。(のんびり休憩できる)
・先ずは木村がリードしたがピナクルから右に出れずにリード交代。
・1P目終了点から少し直上してピナクルの右に移動すると残置スリングがかかっている昔の終了点らしきところがある。その真上に残置リングボルトがあるのでクリップしてA0で右へ出ると水平ラインにガバホールドがあります。(昔の終了点らしきところから右へトラバースして方が簡単そうな気がしますがスタンスとなる土のバンドは崩れそうなので止めておいて方がいいです。)
・終了点はハンガー2つ。

3P 垂壁を人工(40m、A1)(木村リード)
・扇岩テラス~ハング下まで
・アブミを使って人工で登りました。残置中間支点の間隔は短くて人工登攀は容易に感じました。
・残置中間支点の状況ですがリングボルトのリングが無くなったところに残置スリングが掛かっている支点は何個かありました。スリングがいつ切れてもおかしくない感じでしたが今回は大丈夫でした。(細めの細引きを持参したほうが良いです。)
・終了点は昔の終了点らしきところをスルーしてハンガー2つの終了点を使用。(昔の終了点らしきところからは壁の傾斜で右上にあるハンガー2つの終了点は目視できないし、短いですがアブミからフリーに変わるので『この上に終了点ないかも・・・』と気持ち負けして間違ってピッチを切らないよう注意!)

4P ハング下まで直上しハング下バンドを右へトラバース~ルンゼ直上し右上のテラス~垂壁(40m、Ⅳ+A1)(山宮リード)
・ハング下~垂壁上のテラスまで。
・ハング下までの直上はアブミを使って人工で登攀。左のフレークをたたくと嫌な音がしますが、このフレークを使わないと登るのが難しいので比較的しっかりしたフレークの付根部分の左上を掴んで登る。
・ハング下バンドのトラバース区間は上の岩が邪魔で立ちづらく歩きづらい。持ち手も微妙なので急がず慎重にトラバースしました。(残置中間支点もほぼ無いのでフォールしたら振られるのでフォールしないよう慎重に!)
・トラバース後ルンゼを上に登り右に見える最初に出てくる終了点らしきところではピッチを切らず、そこからは見えないがその少し上にある終了点まで垂壁を登りピッチを切る。
・カム使えました。
・終了点はリングボルト3つ。

5P スラブのクラック~小ハングを左に出る~スラブ(40m、Ⅴ+)(木村リード)
・垂壁上のテラス~スラブ途中の終了点まで。
・小ハングを越えるところとあと1箇所でA0しました。
・残置中間支点は豊富にあります。
・ロープスケルは45mぐらい?50mロープで残り少なかったです。
・終了点はリングボルト3つ。

6P ルンゼ状スラブ(30m、Ⅳ)~7P 泥のルンゼ(25m、Ⅲ)
・5P目終了点から上を見て登っても面白そうではないし同ルート懸垂下降で下りるので登らなかったです。

◆下山
・各懸垂下降点には残置のカラビナがあります。
・雲稜ルートは右へ行ったり左へ行ったりとジグザグに登りますが下降は一直線で下ります。初見の場合はどこでピッチを切るか事前に調べておくと安心です。
・雲稜ルート5P終了点からT4までは50mダブルロープ2本使い×5回の懸垂下降で下りました。(扇岩テラスの扇岩が無くなったので懸垂下降ルートが変わってます。4回目の懸垂下降は大テラスの方へ下りずに真っすぐ1P目終了点へ下りれます。)
 ①5P終了点→4P終了点から横尾方面に見える懸垂下降点
 ②4P終了点から横尾方面に見える懸垂下降点→3P終了点
 ③3P終了点→2P目終了点
 ④2P目終了点→1P目終了点
 ⑤1P目終了点→T4
・T4からT4尾根までは50mダブルロープ1本使い×2回と50mダブルロープ2本使い×2の計4回の懸垂下降と歩きで下りました。 
 ①T4の少し下の支点→T4尾根3P終了点(50mダブルロープ1本使い)
 ②土のルンゼ途中の支点→T4尾根2P終了点に使った灌木(50mダブルロープ1本使い)
 ④T4尾根2P終了点に使った灌木→T4尾根1P終了点(50mダブルロープ2本使い)
 ⑤T4尾根1P終了点→T4尾根取付(50mダブルロープ2本使い)

★感想:

(山宮)屏風岩の雲稜ルートは7年ぶり3回目でした。横尾のゲートで警察の方に支点が年々悪くなっている。救助ヘリは忙しいから飛ばせないけど自力で下りる等の対処できるか?と脅し文句オンパレードでしたが問題ないですと答えると最後はくれぐれも無理せず慎重にと言われました。雲稜ルートは言っていたほど支点の状態は悪くはなかったです。(1〜4P終了点はハンガーに整備されてました。)2ピッチ目と5ピッチ目でA0しましたが落ちるよりはと安全&スピード重視で登りました。東稜のフリー化ルート(オープンロード)をつるべでフリーで登っていた男女パーティーがいましたが、フォールできない状況で登るメンタルが凄いなーと思いながらも落ちないかどうかヒヤヒヤ眺めてました。

(木村)
【初日:移動とベース設営】横尾に移動し早朝の暗い中での出発に備えて早々に就寝を試みた。しかし隣の山岳会のテントからのいびきが非常にうるさくなかなか集中して眠れなかったのが痛かった(下山後も同じテントの方からワインをいただいて「案外いいやつじゃん」と少し許したもののその夜も再びいびきに悩まされるという顛末であった)。
【アタック日:取り付き〜T4テラス】まだ暗い中を出発し本谷の渡渉は場所を選んで膝丈程度でクリア。明るくなってから確認すると近くに倒木を利用した橋がかかっていた。下部岩壁の取り付きで空が白み始め日が昇るまでの30分間、登攀準備をしながら待機。下部2ピッチでロープを出し残りはコンテでT4テラスへ向かった。T4テラスには先行1パーティ(3人、前日ビバークで全装のまま屏風の頭まで抜ける計画)がいたが荷物の重さでハングを越えられず苦戦していたため順番を譲ってもらう形となった。
【登攀ピッチの攻防】1ピッチ目(5.7・山宮さんリード):難なくクリア。2ピッチ目(5.9・木村リード):小垂壁を越えた後のルーファイに自信が持てずトラバースすべきか判断に迷い時間をロス。一度戻り山宮さんに選手交代をお願いした。直上気味に右上するのが正解でそのままトラバースしていたら行き詰まっていたところを山宮さんの的確なリードで突破。さすがの実力に救われた。3ピッチ目(Ⅳ+・A1・木村リード):約40mに及ぶアブミのルート。手順を確認しながら慎重にこなした。リングボルト、時々ハンガー、変形リングボルト、マイロン、細挽きとボロい支点にドキドキしながらソーっと立ち込む動作を20回以上繰り返した。支点が弾切れになるため貧弱な支点はアブミと一緒に回収して間引く作業も発生。最上段への立ち込み区間にはガバホールドがあったが終了点間近の2〜3手はフリーとなりアブミの支点が突然なくなったことで焦りを覚えた。あんなに頼りなく見えたボロいリングボルトがこれほど恋しくなったことはない。さらに終了点が見えず「ルートを間違えたか」と肝を冷やしたが思い切ってフリーで一手出して終了点が見えた瞬間の安堵感は今年一番の嬉しい出来事だった。4ピッチ目(5.9・山宮さんリード):難なくクリア。5ピッチ目(5.7・木村リード):小ハングを越える部分が一手悪く3ピッチ目で散々訓練したアブミの技術がここで活きた。しかしハンガーボルトの終了点がどうしても探せずロープもそこそこ出ている中で「このまま前進すべきか、怪しげなリングボルト3箇所の終了点で切るべきか」と再び迷いが生じる。3手ほど前進したものの先に何も見えないため戻る決断を下したがクライムダウンできるような傾斜ではない。迷った末に鉛筆ほどの灌木を4本まとめて残置スリングでタイオフしフィックスでソーっと腹ばいになって降りることで事なきを得た。ボルトで補強されるほどではないピッチグレードは古の姿のまま残されてあることを身をもって理解した。
【下降と下山】予定通りこの5ピッチ目で登攀を終了としルンゼの2ピッチは詰めずに4ピッチの懸垂下降でT4テラスへ戻る。まっすぐ下降すると自然にきれいな終了点が現れる。T4からの下降はフリーで登った上部のみ折り返し1本で懸垂、下部2ピッチは2本繋いで2ピッチの懸垂でスムーズに降りられた。ガラガラの1ルンゼを下降したのち本谷を渡渉して横尾に無事帰着した。
【反省と今後の課題】ルーファイと判断力:ガイドが入っている雲稜ルートとはいえ一手が悪い箇所や次の支点が見えない場面でルーファイに迷うことが多かった。「思い切って立ち込むべきか退路がなくなるか」とモジモジして時間をロスしてしまいパートナーの山宮さんには大いに迷惑をかけてしまった。パートナーへの感謝:リード・フォローともに素早く安定した山宮さんの技術には圧倒され本当に心強かった。厳冬期であればビレイヤーを凍死させていたかもしれないレベルのタイムロスであり自分のアルパインの技術・感をさらに磨く必要性を痛感した。収穫:人工登攀(アブミ)やルーファイにおけるシビアな判断そして自分の現在地を知る上で非常に濃い充実したマルチピッチ登攀となった。

★山行の詳細はヤマレコにアップしてあります。

 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-10422766.html

10/10、賑わう上高地
10/11、T4尾根1P目をリードする木村
雲稜ルート1P目をリードする山宮
雲稜ルート2P目を登ってくる木村
雲稜ルート3P目をリードする木村
雲稜ルート3P目を登ってくる山宮
雲稜ルート3P目終了点から4P目を見上げる
雲稜ルート4P目を登ってくる木村
雲稜ルート5P目をリードする木村
雲稜ルート5P目を登ってくる山宮
雲稜ルート5P目終了点から6~7Pを見上げる
雲稜ルート5P目終了点から懸垂下降する
5回目の懸垂下降でT4まで下りる
1ルンゼから屛風岩を見上げる
1ルンゼを下っていく
横尾谷を渡渉する

投稿者: 新潟クライミングクラブ

新潟クライミングクラブは新潟市にある山岳会です。フリークライミング、クラッククライミング、アルパインクライミング、アイスクライミング、沢登り、山スキーなど幅広く活動しています。

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