剱岳 源次郎尾根(北アルプス)

★山域:剱岳 源次郎尾根(北アルプス)

★日付:2025.05.04(日)~06(火)

★天気: 5/4 ガス&強風、5/5 高曇り一時晴れ間(明け方~早朝は強風、その後も風あり)、5/6 雨っぽい雪

★山行形態:山岳会山行、アルパインクライミング

★メンバー: 山宮(L)、佐藤ゆ(SL)、阿部、土田し、宮崎(アタック敗退)

★ルート:室堂→別山乗越→剱沢テン場(テン泊)→平蔵谷出合→ルンゼ取付→(源次郎尾根を登攀)→剱岳→(平蔵谷を下降)→平蔵谷出合→剱沢テン場(テン泊)→別山乗越→室堂

★ルート状況(2025年5/6現在のものです。)

【剱沢の雪渓】
・クラックは無し。
・5/5早朝は程よく雪が締まっていて歩きやすかったですが、下山時の平蔵谷からテン場までの登り返し時は雪が緩んでいてよく踏まれたトレースを外すと少し歩き辛いです。

【平蔵谷の雪渓】
・クラックは無し。
・源次郎尾根から見た時は傾斜があるかなー?と思いましたが、実際下ってみるとそこまでの傾斜は無くクライムダウンするところはなかったです。雪も程よく緩んでいて下りやすかったです。
・デブリ痕はなかったです。(右側の壁には雪があり今後落ちてくると思われます。)

【源次郎尾根】
・全体を通して雪はカチカチじゃなく程よい硬さで締まっていてステップも決めやすく登りやすかったです。
・取付から尾根へ上がるルンゼ、一峰への登り、二峰への登り、剱岳本峰へ登り、と登るところは思っていたよりも傾斜がなくて休み休み登れるのでふくらはぎが張ることなく登れました。
・取付から尾根へ上がるルンゼの突き当りの岩峰は左から巻いて雪のリッジへ上がりその次の岩は右から巻いて登りました。
・一峰からの下りは一部ナイフリッジもあり傾斜もあるのでクライムダウンを交えながら慎重に下りました。
・二峰から懸垂下降支点への区間はナイフリッジになっていて慎重に通過しました。
・懸垂下降支点からは60mダブルロープ1本で懸垂下降1回で下りました。(雪が多かったのでロープは余裕で足りました。)

★感想:

(山宮)当初の日程は5/3~5/5でアタック日の5/4の天気予報が悪かったので、晴れ予報の5/5をアタック日に変更して5/4~5/6の日程で行くことにしました。日程変更によりメンバー3人減となり5人でアタックとなりました。結果、5/5のアタック日は出発してしばらくは風が強かったですが問題なく登れました。完全な晴れではなく高曇りだったのも暑くなくて良かったです。アタック日、剱沢テン場を出発して早々(剱澤小屋を過ぎてすぐぐらい)に突然、上から目の前を誰かが滑り落ちていくのが見え、「あっ!行かなきゃ!」と思いとっさに小走りになりかけましたが間に合うわけでもなく冷静に「ここの斜面の下は剱沢雪渓で傾斜が緩めば止まるだろう」と走り下りるのは止めました。滑落したのは宮崎さんでした。幸い怪我はなかったですが滑落中に足で無理やり止まろうとアイゼンを雪面に引っかけていたら足が折れてもおかしくないので、悪い言い方ですが上手く滑り落ちてくれたなーと思いました。宮崎さんが滑落した原因はアイゼンを引っ掛けたそうです。滑りだしてから腹ばいになりアックスで滑落停止姿勢を取ったそうですが既に加速しているのでアックスは弾かれ(弾かれたアックスはスリングが切れ吹っ飛んでいきました。土田しさんが回収。)凍った急斜面では止まることなく滑落していきました。滑落停止訓練が重要と言われますが加速する前、初動で止まらないと急斜面、凍った斜面では止まりません。(自分の経験でもそうです。)転ばない歩行技術が1番重要だと思います。宮崎さんにこのまま行くかどうするかを問い正すと自信を無くした宮崎さんはここでリタイヤ、テントに戻って留守番となりました。源次郎尾根は無雪期、積雪期を通して初見でしたが先行パーティーがいたので迷うことなく歩けました。平蔵谷出合から剱沢テン場までの登り返しはきつかったです。室堂~剱沢テン場までの移動が疲れました。(ここが今回の山行の核心?w)下山時室堂で各メンバーのザックを持ってみましたが私のザックが一番重かったです。(2番目に重い佐藤ゆさんの1.5倍ぐらい?)

(佐藤ゆ)源次郎尾根は2時20分にテン場を出発した先行パーティのトレースを辿る作業になりました。その点が少し残念でした。技術的に難しいところはないですが、リッジのトラバースが高度感、緊張感がありました。雪壁のダブルアックス、前爪の登りが多く、たしかに体力さえあればという感じではありますが、冬山にあまり行ってないメンバーが来ていたら大変だったと思いました(怖いと思います)。

(阿部)谷川岳東尾根の後体力トレをして挑んだ今回でしたが、山宮さん佐藤さんのおかげで登りきることは出来ましたが、ついて行っただけという感じでした。行動の要所要所に改善点がおおかったので、今後も体力トレや、クライミングをしながら復習して行きたいと思います。山自体は、テントから出た時点では風が強かったですが、次第に晴天に変わり、素晴らしい天気の中で登れて大変良かったです。

(土田し)初日の夜からアタック当日の朝までのうなるような強風と、テント場を出発した直後の宮崎さんの滑落もあり序盤はかなり緊張しました。暗闇のなか取付きのガチガチのルンゼの急雪壁をダブルアックスで登攀。その後はナイフリッジと急雪壁が代わる代わる現れる源次郎尾根で特にシンドかったのは、Ⅱ鋒の懸垂ポイントの手前のナイフリッジで、足元はスッパリと切れ落ちて高度感があり、進むにつれ垂壁状に鋭利に切り立つリッジをトラバース、その後垂壁をクライムダウンしたのにはかなり肝を冷やしました。今年になって体調が今ひとつでろくに山歩きをしていなかったので体力的にもキツかったです。源次郎尾根は技術的に難しいところはないということはなく、それ相応の経験と技術、体力がなけれは登りきることは厳しかったと思います。不安と恐怖心を煽る未明の強風が嘘のように明るくなると高曇りの下アルプスの景色が見れて良かったですが、これぐらいの山は自分の力で登れるようにならないとダメだなと思ったりもしたのでさらなるレベルアップに努めたいと思います。下山後の念願の徳市の絶品のアジフライとともに忘れられない山行となりました。

(宮崎)【一瞬のスキ!剣岳源次郎尾根-敗退の記】午前8時半、テント内の明るさに急かされるよう、のろのろと起き出して外の様子をみた。夜半からの唸るような強風は、少しは弱まって来たけど、時折の突風は絶えることがない。ここは、2025年5月5日、北アルプス剣沢野営場。主が、ほとんど出かけた十張り程のテント村は、雪のブロック壁に囲まれ小さな砦のよう姿で、静かにたたずんでいる。が、ワタシは一人、メンバーと別れて「テントの人」となっている。

未明の2時半、突風が荒れ狂う中、NCC(新潟クライミングクラブ)の4人と源次郎尾根からの剣岳登攀に向けて出発した。時折雪のつぶてが顔を打ちつける。源次郎尾根取付きを目指して、カリカリの雪渓を小気味よく下って行った。ヘッドランプに照らされた雪面は輝き、アイゼンの爪もよく刺さる。

と、その時、片足のアイゼンが……! しまった! とき既に遅く、つんのめるように転倒してしまった。ツルツルの雪面は、アイスアックスで制動を試みるも効かない。腹ばいのままにヅルヅル滑り落ちて行く。どうなるんだ!?と思っていたところ、幸いにも、傾斜が緩んで柔らかな雪の上で止まってくれた!片足のアイゼンが、もう片方のスパッツを引っかける。基本の基である注意を怠ってしまう。事故とはこういう事なんだ!脳裡を過ぎった。

どのくらい滑り落ちたのか、暗くて分からないけど、20m以上は落ちたか。(後でメンバーの話では80mだったと)倒れ込んでいるワタシに向かって、4個のヘッデンが上から向かって来た。「大丈夫か!」「大丈夫か!」幸い痛みらしい痛みはなかった。ひもが千切れた片方のアックスを忍さんが拾ってくれていた。山宮会長が、「ここは難ルートではないが、一瞬のスキも抜けない」「少雪だったら岩がゴロゴロ、危なかった」

さて、この先どうする!?山宮リーダーは、「宮崎さんが決めること」と、明快に。ワタシは、逡巡した結果、昨日のテント場までの20kgの荷重の疲労感と、この先みんなの足手まといになる懸念も勘案して敗退を伝えた。暗闇に一人、テント場に戻る足もとは重かった。敗退を告げてよかったと思った。

傷心の眠りから覚めた8時半、テント場からみる景色は辺りを一変させていた。眼下の剣沢小屋から剣山荘上部まで、ベッタリ付いた雪も、剣岳に突き上げる辺りから、真っ黒な岩稜が幾筋も競い合っている。剣岳にして剣たる所以の光景だ。小屋泊まりだった岳人が、ちらほら周辺を歩いて来る。スキーを担いた人達も。空は薄雲だが、雪の心配はない。源次郎尾根は断念したけど、この景観に満足しろ、と自分に言い聞かせた。歳の話はしたくないが・・・本年75歳、体力の衰えは隠せないのだろうけど、本人的には“まだ…!”と云う思いで今日まで来た。しかし、昨日の疲れと今日のアクシデントは別ものではないと、思わざるを得ない。いよいよ来るところまで来たのか!?

10時 風もだいぶ収まって来た。メンバーは今どの辺だそう?そこも風が収まって欲しい。だったら最高のコンデション。元気で帰着するだろう。天候回復のせいか、ヘリが数機往来している。みんなの帰りは、14時過ぎだろうと思っていたが、12時過ぎ、テントの外で物音が!もしや?と思ったら佐藤SLが「疲れました」と一人で。「早かったね〜!」と、無事の帰還と登頂の祝福をしているうちに、山宮CL、阿部さんと続いて、忍さんがしんがりを努めて来た。忍さんには、去年の小窓尾根に続く「2年連続の剣岳、自慢していよ」と称えた。

★山行の詳細はヤマレコにアップしてあります。

 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-8137678.html

5/4、剱沢テン場
5/5、源次郎尾根へ上がるルンゼを登攀中
ルンゼから尾根へ上がる
灌木混じりの岩稜は右へ巻いて雪壁を登る
剱岳を眺める佐藤ゆ
一峰へ
一峰から見た二峰への雪壁を登る先行4人パーティー
二峰を登ると懸垂下降支点まではナイフリッジ
ナイフリッジを通過中
懸垂下降の準備をする佐藤ゆ
懸垂下降する阿部
懸垂下降後、山頂までは雪稜を登るだけ
山頂を目指して登ってくるメンバー
山頂で記念撮影
山頂からカニのよこばいを下山して平蔵谷へ
平蔵谷を下る
平蔵谷出合から剱沢テン場への登り
剱沢テン場に帰還して剱岳を眺める土田し
5/6、別山乗越から雷鳥沢キャンプ場へ下る

投稿者: 新潟クライミングクラブ

新潟クライミングクラブは新潟市にある山岳会です。フリークライミング、クラッククライミング、アルパインクライミング、アイスクライミング、沢登り、山スキーなど幅広く活動しています。

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