一ノ倉沢烏帽子沢奥壁変形チムニー(谷川岳)

★山域:一ノ倉沢烏帽子沢奥壁変形チムニー(谷川岳)

★日付:2023.05.27(土)

★天気:曇り時々晴れ

★山行形態:山岳会山行、アルパインクライミング

★参加者:山宮(L)、岸畑

★ルート:谷川ベースプラザ→一ノ倉沢出合→(一ノ倉沢の雪渓を登る)→テールリッジ基部→(テールリッジを登る)→中央稜取付→変形チムニー取付→(変形チムニーを登攀)→10P目終了点(変形チムニー終了点:烏帽子岩の肩)→ダイレクトルートのルンゼ→南稜ルート終了点→(6ルンゼ右俣~南稜ルートを懸垂下降)→烏帽子スラブ横断バンド→中央稜取付→(テールリッジを下る)→テールリッジ基部→(一ノ倉沢の雪渓を下る) →一ノ倉沢出合→谷川ベースプラザ

★ルート状況(2023年5/27現在のものです。)

◆アプローチ
【一ノ倉沢出合~テールリッジ基部】
・一ノ倉沢出合からテールリッジ基部まで雪渓通しで歩けません。右岸の夏の高巻き道へ上がってしばらく歩いてから夏の高巻き道から沢へ下りるところで雪渓に下りてテールリッジ基部まで雪渓を歩きました。
・雪渓歩きに慣れてない人はチェーンスパイク等があると安心だと思います。

【テールリッジ基部~中央稜取付~変形チムニー取付】
・岩が乾いている状態なら問題なく歩けますが濡れているときはスリップ注意!!(濡れ防止や軽さをも求めてアプローチシューズ以外の靴を履いてくると濡れている岩では滑って怖いらしいです。靴が濡れることは諦めクライミング時用の替えの靴下を携行してくることをお勧めします。)
・残置フィックスを使用する場合は大丈夫そうか確認しましょう!!

◆一ノ倉沢烏帽子沢奥壁変形チムニー(4級、Ⅴ)

1P 階段状のフェース Ⅲ+(山宮リード)
・右側の取付からは岩が濡れていたので比較的岩が乾いている左側の取付から登りました。岩が濡れているところもありましたが階段状なので問題なく登れました。
・残置中間支点は1つ
・終了点はハンガー2つ
 
2P 左上しフェイスを直上 Ⅲ+(山宮リード)
・出だしから最後までほぼ全面岩が濡れていました。左上後のフェイスは右よりのスラブっぽいフェイスを登ると終了点まで最短で登れますが岩が濡れててスメアが効きそうにないので左よりの階段状のフェイスから登りました。
・残置中間支点は2つ
・終了点はハンガー2つ

3P フェイスまたはクラック~緩傾斜のルンゼ Ⅳ+(左はⅤ-)~Ⅱ(山宮リード)
・トポにはフェイスまたはクラックと書いてありますがフェイスの左側が登られているっぽい(2P終了点からフェイス直上は登れそうだが残置支点が無くナチプロも取れない。2P終了点から右のクラックも残置支点がほとんどなく草ぼうぼうで登られている気配はない。)のでフェイスの左側を登りました。
・写真では寝ているように見えますが出だしから傾斜が立っていて岩は濡れていて滑ると危ないので残置スリングを掴んで壁を一段上がるもその先の残置は少し上の岩が崩壊しているところの上から垂れ下がっている残置スリングのみ。もう少し上がらないと垂れ下がっている残置スリングへは届かないのだが、持ちたい岩は動くしその先の岩も動きそうなので上から垂れ下がっている残置スリングの方へ登るのは諦めて一旦左に出てから直上することにする。持ちたかった動く岩の下のフィンガーサイズぐらい隙間(ここに0.5か0.75のカムがあれば使えます。今回は携行してなかった・・)に右手の指を突っ込み左の大きな岩を左手で掴んで体を左に寄せると両手でぶら下がるような感じになり緊張しましたが草の中のスタンスがあったので荷重分散できました。その後は慎重に高度を上げ、緩傾斜のルンゼまで登ると岩は乾いていて快適に登れました。
・残置中間支点は2つ(2つとも支点の穴は塞がれていて切れてもおかしくない垂れ下がったスリングを使う。)
・終了点はハンガー2つ
・6ルンゼ右俣~南稜ルートを懸垂下降してた時に前のパーティーから変形チムニーの後続パーティーが結構な数の落石をさせていたと話を聞いたので、もしかしたら悪い岩は無くなってスッキリして登りやすくなったのかも?

4P チムニー Ⅳ、A0(Ⅴ)(岸畑リード)
・バック&フットで登ると安定します。(ザックの中に入れていたペットボトルがガリガリと潰れそうな音を出していたので微妙でしたが・・・ザックに関しては何かしら対策するとストレスレスでバック&フットできると思います。)
・チムニー内は全部濡れているわけではなくて主に左側の壁が濡れてます。右側の壁は比較的乾いていて細かいスタンスがあります。濡れている左側の壁に背中を押し付け右側の壁に足を押し付け背中ズリズリで少しずつスタンスを上げて登っていき、チョックストーンのところ(壁が狭まるところ)で左側の壁に足を置き(段差になった良いスタンスがあります。)、体勢をバック&フットから戻して左壁のホールドを使って登っていき、抜け口は右壁の外のホールドを使って登りました。
・残置中間支点はそれなりにあります。
・終了点はハンガー1つにリングボルト1つ

5P カンテを直上して右へトラバース Ⅳ(山宮リード)
・意外に悪い直上をこなして残置中間支点が無いトラバースをこなします。トラバースなのでフォローもフォール厳禁!!
・残置中間支点は1つ
・終了点はハンガー1つに残置ハーケン1つ

6P ルンゼからチムニー Ⅳ(岸畑リード)
・ここから中央カンテと合流になります。
・ルンゼやチムニー内は浮石が多いです。
・チムニー内に身体を入れないで登ると登りやすいです。
・残置中間支点はそれなりにあります。
・終了点はハンガー1つにリングボルト1つ

7P フェイスを左から回り込み階段状のフェイスを右上 Ⅲ-(山宮リード)
・6P終了点からフェイス左へ回り込みます。(出だしの残置中間支点が見えないので直上?右から?と迷うかもしれません。)
・フェイスは階段状で問題なく登れますが、岩はほとんど浮石なので慎重に!!
・残置中間支点は2つ(同じところに2つあるので実質1つ)
・終了点はハンガー2つ

8P 垂壁~コーナークラック Ⅴ(岸畑リード)
・出だしの垂壁は外傾したスタンスに立ち込めるかと、カバだけどもげそうな岩で思い切って登れるかがフリーでの突破の鍵です。
・後半のコーナークラックは出だしにハンドジャムできるクラックがあり利用すると楽に離陸できます。クラックのみで登るよりコーナー左のフェイスを利用するとホールドやスタンスが豊富で楽に登れます。
・残置中間支点はそれなりにあります。
・終了点はハンガー2つ

9P スラブ~凹角 Ⅳ(山宮リード)
・スラブも凹角も岩がボロボロなので注意してください!!
・スラブは残置中間支点がほぼ無いのに対して凹角(と言うより凹角左側の壁)には残置中間支点がそれなりにありました。
・終了点はハンガー1つにリングボルト1つ

10P 草付の凹状部~フェイス~烏帽子岩の肩 Ⅲ(岸畑リード)
・特に問題なく登れました。
・ロープスケルは45~50mぐらいでした。
・残置中間支点はそこそこあります。
・終了点は残置ハーケンやリングボルトが複数あり

◆下降

【10P終了点(烏帽子岩の肩)→ダイレクトルートのルンゼ→南稜ルート終了点】
・1ピッチ空中懸垂下降でダイレクトルートのルンゼへ下りそのまま南稜上部の草付の方へ横断しながら下っていきました。(50mで残置スリングの掛かった残置支点が2つある所まで行けます。)残置支点の残置スリングでセルフをとり、そこでロープを肩に巻き、熊笹を掴みながらフリーで南稜終了点まで下りました。

【6ルンゼ右俣~南稜ルート~烏帽子スラブ横断バンド】
・懸垂下降5回(50mロープ2本で6ルンゼ右俣を2回、南稜ルートを3回)で烏帽子スラブ横断バンドまで下りました。

【烏帽子スラブ横断バンド~中央稜取付~テールリッジ基部】
・傾斜の急なところはクライムダウン、その他は普通に下りました。
・残置フィックスを使用する場合は大丈夫そうか確認しましょう!!

【テールリッジ基部~一ノ倉沢出合】
・特に問題なく下りました。

★感想:

(山宮)5/27(土)は山岳会山行で谷川岳の一ノ倉沢の壁を登ってきました。今年も参加メンバーの希望のルートに分かれて登攀することになりました。いつも通りこの日も普通に大勢の人が一ノ倉沢の壁を登りにきてましたが、登るルートがほどよくバラけてて酷い渋滞は無かったと思います。変形チムニー取付には無事1番で到着できました。明るくなると同時ぐらいに変形チムニーを登攀開始。中央カンテを登るパーティーがいましたが変形チムニーから中央カンテに合流した時にはそのパーティーより前にでれたので最後まで先頭で登れました。6ルンゼ右俣~南稜の下降は前に1パーティーがいたのでのんびり懸垂下降になりましたが待ち時間もそれほどなくスムーズに烏帽子スラブ横断バンドまで下りれました。中央稜組を待たせるのも悪いのでサクサク下山、衝立前沢出合でトランシーバーで中央稜組と交信しましたが何を言っているのかよく聞き取れず『何を言ってるか分からないけど交信できるってことは無事だという事でしょう』とKさんから言われ『そうだな』と思い、もしかしたらもう一ノ倉沢出合で待っているのかもと考え足早に一ノ倉沢出合へ下山しました。13:39に一ノ倉沢出合に着きましたが中央稜組はまだいなかったので再び交信すると中央稜組はその時まだ略奪点の手前でした・・・ここで約2時間待ちました。変形チムニーは昨年の2Pで敗退したのをカウントしないと今回は2回目、中央カンテも2回登っているので迷わず登れました。変形チムニーは1~3P目まで岩が濡れまくってました。ルート全体を通して濡れた3P目が難しかったです。3P目は支点も少なく(と言うか1つ)スリング強度もフォールに耐えれるか信用できないので躊躇なくA0で登ろうと思いましたが出だしの支点しかなかったのでA0は最初の1回しかできませんでした。その後のフリーでの突破は頑張りました!!(残りは全てフリーで登れました。)岸畑さんは昨年の敗退からの再チャレンジで無事に完登できて良かったと思います。変形チムニーのチムニーピッチをリードしたいと言ってくるのも良かったと思います。偶数ピッチリードで中央カンテ合流後の垂壁~コーナークラックの核心ピッチもリードできて満足だったんじゃないかなー。ただ濡れた2P目のリードを私に譲ってくれるのはまだまだかなー(笑)もっと経験して強くなってください!

(岸畑)全体的を通して岩が脆く、浮石も多く緊張感のあるクライミングで疲れました。終了点は全ピッチハンガーに整備され直されていたのでその点は安心できました。

★山行の詳細はヤマレコにアップしてあります。

 https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5556727.html

1P目を見上げる
2P目を登ってくる岸畑
3P目を見上げる
4P目をリードする岸畑
チムニーをフォローで登攀中に上を見上げる
5P目を見上げる
6P目をリードする岸畑
7P目終了点が手前にある
8P目出だしの垂壁をリードする岸畑
8P目後半のコーナークラック
9P目を見上げる
10P目を見上げる
烏帽子岩の肩にある10P目終了点からダイレクトルートのルンゼへ懸垂下降
熊笹帯をトラバースしてくる岸畑
6ルンゼ右俣の懸垂下降支点に到着
5回の懸垂下降で烏帽子スラブ横断バンドまで下りてきてロープを片付け一ノ倉沢出合へ
中央稜組よりも先に一ノ倉沢沢出合まで下山してここで中央稜組を2時間待ち

投稿者: 新潟クライミングクラブ

新潟クライミングクラブは新潟市にある山岳会です。フリークライミング、クラッククライミング、アルパインクライミング、アイスクライミング、沢登り、山スキーなど幅広く活動しています。

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