★山域:一ノ倉沢滝沢第3スラブ(群馬県)
★日付:2023.03.04(土)~5(日)
★天気:3/4 曇り→F4過ぎてからガス(風で雪が舞う)
3/5 晴れ
★山行形態:個人山行・アルパインクライミング
★メンバー:山宮、他1名
★ルート状況(2023年3/4~5現在のものです。)
◆アプローチ
・暗闇のノートレースの一ノ倉沢を登っていくと、クレパスが出てきたのでロープを出してクレパスを突破しようと試みて右往左往。そうこうするうちに後続パーティーが追いついてきた。後続パーティーは知り合いのSさんYさんコンビで二ノ沢右壁を登りにきたとのこと。聞くと『ここは二ノ沢だよ。3スラはあっち!』と教えてもらいようやく自分たちの間違いに気づき方向修正。(暗闇の中、左に稜線を認識して登っていたらいつの間にか二ノ沢を登っていました。左の稜線は一・二ノ沢中間稜でした。)
・間違いに気付いてからロープを一旦片付け二ノ沢を少し下降してから一ノ倉沢本谷へトラバースして滝沢下部へラッセルして登りました。
・一ノ倉沢本谷のラッセルは踝程度。二ノ沢にはヒドゥンクレパスを含めたクレパスが2~3箇所ありましたが一ノ倉沢本谷はクレパス無し。
◆一ノ倉沢滝沢第3スラブ(5級下、Ⅳ)
ルート全般
・ピッチはその都度終了点を構築できそうなところでとりました。(ロープの長さやどこでピッチを切るかによってピッチ数は変わると思います。)
・基本プアプロでフォローも墜落厳禁!!
・3スラ内は氷が出ていたので終了点の構築には困らなかった。(この辺の条件は良かった。)
・上部草付は除雪しながらの登攀で時間がかかった。(この辺の条件は悪かった。)
・上部草付は完全に凍ってないのでフッキングが決まっているかどうか確認必須!!
・上部草付はふかふか雪が多く片足荷重でスタンスを置くと崩れやすい。ただスタンス崩れてもフッキングが決まっていれば落ちないので挽回できる。
1P目(氷瀑)(フォロー)
・氷瀑は割れやすい氷でしたが傾斜が垂直ではないので問題なく登れた。
・終了点は雪の中の氷にアイススクリューで構築。
2P目(雪壁)(リード)
・傾斜の緩い雪壁をラッセルしながら登る。
・ロープいっぱいになったので終了点に良さそうな氷までコンテで登った。
・雪壁はところどころ氷が出ているところもありアイススクリューで中間支点が取れた。
・終了点は氷にアイススクリューで構築。
3P目(氷瀑・・・過去の記録を見て参照するとF4だと思われる)(フォロー)
・F4の氷瀑は左のラインを登った。傾斜は緩く問題なく登れた。
・終了点は氷にアイススクリューで構築。
4P目(氷瀑~雪壁)(リード)
・3P目終了点から直上する氷瀑は短くても立っていたので少し右へトラバースして緩やかな右ラインの氷を登り雪壁は雪の状態が良い場所を選んで左上した。
・雪壁はところどころ氷が出ているところもありアイススクリューで中間支点が取れた。
・終了点は氷にアイススクリューで構築。
5P目(氷瀑・・・過去の記録を見て参照するとF6だと思われる)(フォロー)
・F6の氷瀑は左端の高低差の無い氷のラインを登った。特に問題なく登れた。
・終了点は木にスリングとハーケン1枚で構築。
6P目(雪壁)(リード)
・ラッセル登攀で70mのランナウト。雪の状態が良い場所を選んで登る。
・終了点を右の3スラと2スラの中間リッジ脇に生えている灌木に求めようとしたが雪の状態が悪くそこまで行くのは難しいと断念。終了点はスノーバー1本を縦差しで構築した。(そもそもリードしてここは落ちないと思ったからプアプロの終了点にしたがスノーバーを横に埋めて強度の高い終了点を構築するべきだったか?雪をもっと掘ってスタンディングアックスビレイのほうが良かったか?そうなるとセルフ支点はアックスを埋めて作る?)
7P目(雪壁)(フォロー)
・引き続きラッセル登攀で40mのランナウト。雪の状態が良い場所を選んで登る。
・終了点は3スラと2スラの中間リッジを雪面を跨いで2スラへ入れる付近の貧弱な灌木2本にスリングで構築。
8P目(2スラの雪壁~雪の付いた草付)(フォロー)
・2スラへ入ると2スラは立っていて雪がふかふかで悪い。
・終了点は中間リッジ側の灌木にスリングで構築。
9P目(雪の付いた草付)(フォロー)
・相変わらず2スラ内は立っていて雪がふかふかで悪い。中間リッジがある場所はリッジ上草付や岩を頼りにフッキングを決めて登る。中間リッジが無くなると雪の付いた草付を除雪しながらの登攀になる。スタンスが崩れやすいので確実にフッキングを決めて登る。
・終了点はスノーバー1本を縦差しと熊笹を束ねてスリングで構築。
10P目(雪の付いた草付~傾斜の強い雪の付いた草付)(フォロー)
・引き続き雪の付いた草付を除雪しながらの登攀となる。スタンスが崩れやすいので確実にフッキングを決めて登る。
・登って行くと後半は傾斜が強くなる。相変わらずふかふか雪を除雪してスタンスが崩れても大丈夫なようフッキングを確実に決めて登る。
・終了点は灌木にスリングで構築。
・フォローの私が登ることにはヘッデン登攀。ガスって見えなかったがビレイ中の一瞬の晴れ間で右に岩が見えていたのでそこがドームじゃないか?と話す。ならばここは登りすぎで右下へ斜め懸垂下降するのが正解?私が少し懸垂下降して右を見たがガスってて岩は見えない。岩は見えないが右下は草付でなく右上する雪壁になっていたので見えた岩の位置はこの終了点から真横にありそう。登り返してその旨をOさんに伝えるとOさんが見た過去の記録では凍ってない垂直の草付に苦労したとの記述があるのでまだ上に登るんじゃないのか?との意見がでる。いろいろ話したが、ガスっているしもう暗くて確かめようもないので今晩はここでビバークすることになった。
・終了点を除雪して2人が壁を背中にお座りできる程度のスペースを作りビバークした。終了点にした灌木からセルフを取り他からもバックアップも取ったが心許ない感じがした。ツエルトを風よけにしたが脇がスカスカなので寒い。密閉空間ではないのでガスの火を付けても暖かくならないしラッセルで濡れた衣類は乾かない。アイゼンは外せず湿った靴は脱げないし靴紐も緩められないので足が痺れる。体勢は悪く少し動くと疲れであちこちが攣る。目を瞑ってひたすら時間が過ぎるのを待つ。うとうともするが寒さですぐに起きる。長い夜だった。
11P目(傾斜の強い雪の付いた草付~雪壁)(フォロー)
・10P目終了点の真上は岩が露出していている。右上の方が傾斜が緩く見えるが左から直上する。(上に行けば何か見えるだろうという事で意見がまとまる。)
・出だしから立っていて朝一から緊張した。
・傾斜の強い雪の付いた草付を登りきり雪壁に至るとドームが見えた。選択したルートは正しかった。
・終了点はスノーバー1本を横埋めで構築。終了点のスタンスはカッティングで作ったが雪が柔らかく微妙で踏み踏みすると崩れてスタンスが無くなるのでビレイ中あまり動けなかった。
12P目(雪壁~トラバース)(フォロー)
・ドーム下までは雪壁を登る。上の方は雪が柔らかかった。
・ドーム下から右へトラバースして終了点へ。この区間は微妙に悪い。
・終了点はAルンゼへ懸垂下降支点を使う。
Aルンゼ~国境稜線
・Aルンゼまで懸垂下降で下りてその後はアンザイレン解除してフリーで登る。
・前日の滝沢リッジと二ノ沢右壁組のトレースがありラッセルはなかった。(ラッセルありがとうございました。)
・吹き溜まっているところもあったが問題なし。
・雪がふかふかのところもあったのでステップを確実に決めて登った。
◆下山
・国境稜線からは天神平まで一般登山道で下山しロープウェイで谷川ベースプラザまで下りました。
★感想:2/25(土)に一ノ倉沢を一ノ倉尾根の途中から偵察、3/4(土)と3/5(日)は天気予報を見てスルー、満を持して3/4(土)にOさんと3スラにアタックしてきました。数年前までは3スラに自分が登るとは考えてませんでしたが、ある出会いがきっかけで人脈が広がりその人たちからたくさんの刺激をもらいいろいろ経験して成長させてもらいました。そして1年前にようやく3スラどうかな?と考えるようになりました。ただ登ってくれるパートナーがいないと登れないので(少なくとも新潟県内の周りにはいない。)考えてるだけでしたが、今シーズンに入りやっぱり3スラが頭にあったのでパートナーを探してOさんと登ることになりました。万が一もあり得る山行なのに登攀前の気持ちは落ち着いていていつも通りに生活できてました。そして登攀も落ち着いて登ることができました。今回の山行はビバークしたことも含めて自分の記憶に深く残る山行となりました。一緒に登ってくれたOさんに感謝です。1dayで登る計画が朝一の取付き間違い、ガスによる視界不良や上部草付のふかふか雪の除雪で登攀に時間がかかり1ビバークでの登攀となりました。ビバークの状況については上記のとおりですが、できればビバークはしたくないなーとつくづく思いました。(このビバークは貴重な経験になりました。)今回は3スラ下部は氷が出ているところが多くの条件は良かったと思いますが、F4から上と2スラ~上部草付はふかふか雪が多くて条件はあまり良くなかったと思います。雪崩に関しては前日までの気象状況、当日の天気と雪の状況から気を使うことはなかったです。(3スラ内でチリ雪崩はありましたが問題なしでした。)このルートの核心は凍ってない上部草付の垂直に立っている区間だと思いました。それに今回はふかふか雪が付いていて神経を使う登攀になりました。体重の重い私ではスタンスの雪が崩れまくり危ないのとゼーハーゼーハーと疲れている私に気を使ってくれたのか上部草付はOさんがオールリードで登りました。リードで落ちたら致命的だし2人ともアウトなので登攀力のあるOさんが何も言わずにリードをかってでてくれたんだと思います。(私がリードで落ちたら巻き添えくらうから自分で登ったほうが安心だと思ったのかなー?(笑))ただ私もフォローだからといってフォールできないので気を抜かず登りましたけど!!(笑)簡単に見えた最後のピッチを『最後はどうぞ』とOさんが言ってくれましたが、『頑張って悪い上部草付を全リードしてくれたんだしOさんこそどうぞ』と言ってOさんに最終ピッチのリードを譲りました。フォローで登ってみてドーム下のトラバースが意外に嫌らしくてフォローでよかったーと思いました(笑)3スラを登ろうと思ってから2年、そして計画したシーズンに条件が整って完登できたのは日頃の行いが良いせいか?(笑)ラッキーだったと思います。
★山行の詳細はヤマレコにアップしてあります。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-5243541.html






















