幽ノ沢中央壁正面フェース(谷川岳)

★山域:幽ノ沢中央壁正面フェース(谷川岳)

★日付:2022.10.22(土)

★天気:曇り

★山行形態:山岳会山行、アルパインクライミング

★参加者:岸畑(L)、山宮、他1名

★ルート状況:

◆アプローチ(幽ノ沢出合~カールボーデンの平らなところ)
・幽ノ沢出合~カールボーデンまでは沢登りになります。今回のメンバーは全員がラバーの沢靴でした。
・二俣下の滝の手前のナメ最後のところは細かいスタンスを拾って登るところがあるので滑ってドボンしない要注意!
・二俣下の大滝は滝左側をフリーで登りました。(滝上には終了点があるのでロープ使えます。)
・二俣からは右俣へ。右俣は何本か直登するには苔むした滝があるのでサイドの岩や草付から越えていきました。
・カールボーデンは平らなところまでは問題なく登れます。登れそうなところを好きなラインどりで登ってください。

◆アプローチ(カールボーデンの平らなところ~中央壁正面フェースの取付)
・カールボーデンの平らなところから中央壁正面フェースの取付までは右俣リンネのラインの左にある傾斜のあるリッジ状をフリーで登っていき途中から取付のある草付へ左上するつもりでした。(取付までロープを出すか出さないかを話し合い、先日このラインはフリーで登っていたのでここを登れるだけ登って取付までトラバースするときに再度話し合うことにして登り始めた。)が、快適でどんどんフリーで登っていき、気が付くとカールボーデンの平らなところで確認した取付のある草付の始まるラインは左下に見えていました。(トポでは中央壁右フェースの取付と同じ高度ぐらいに表記されているのに・・・相変わらずトポは大雑把という事か?)すでにトーフ岩を越えるぐらいの高度に達していたので、ここから左下の取付へ悪そうなクライムダウンをするよりもそのまま岩~草付を真横にトラバースして中央壁正面フェースの1P目終了点を目指したほうが容易だと話し合い、リッジ状の岩にあった残置ハーケン2つのあるところで支点を構築してロープを出してアンザイレン開始しました。

◆幽ノ沢中央壁正面フェース(4級、Ⅳ+)

【ルート全般】
・各終了点は整備されていました。(1~3P目終了点はハンガー2つで、それ以降はハンガー1つが設置されてます。)整備ありがとうございます。
・リスはそれなりにありハーケンを何箇所かで使用しました。またカムやナッツ、ボールナッツも何箇所か使用しました。
・参考にしたトポのラインは大雑把で(幽ノ沢のやつは相変わらず大雑把・・)それなりにルーファイも必要でした。
・岩は脆いので岩が剥がれたり落石させたりしないよう注意が必要です。(特に帯状ハングを越えるまでの区間は脆いです。)

【1P 岩~草付をトラバース Ⅱぐらい】(リード:Hさん)
・トポでは1P目取付はトーフ岩の右の草付の始まりあたりとなっていてカールボーデンの平らなところかその草付は確認できました。そこを目指して上記の通りアプローチしましたが登りすぎてしまいトポ1P目の草付フェースは登れませんでした。
・右俣リンネのラインの左にある傾斜のあるリッジ状にある支点から1P目終了点までは岩~草付のトラバースで特に難しくはありませんでした。
・残置中間支点は無し。(ナッツや草付にスリングで取った。)
・終了点はハンガー2つ。
 
【2P 脆いスラブを左上 Ⅲ】(リード:Hさん)
・トポではトラバースとなっているが脆いスラブを左上。最後、終了点へは左上ラインより直上ラインのほうが容易。岩が脆いが難しくはありませんでした。
・残置中間支点は無かったが、ナッツやボールナッツ、カムで取れる。(終了点への直上ラインには残置ハーケンが1つあった。)
・ロープスケルは30mぐらい。
・終了点はハンガー2つ。

【3P 左上して脆い階段状を直上し、脆いフェースを右へ Ⅳ】(リード:Hさん)
・トポでは凹角状からフェースとなっているが終了点から左上して凹角というより階段状を直上して帯状ハング下でフェースを右へ。最後の右へ行くところの岩が非常に脆く気は使ったが難しくはありませんでした。
・残置中間支点は若干あり。
・ロープスケルは30mぐらい。
・終了点はハンガー2つ。

【4P 帯状ハングの乗越 Ⅳ+】(リード:Hさん)
・トポでは帯状ハングの乗越(20m)となっているがハングを越えてからすぐには終了点は無くスラブを右上して終了点へ。
・3P目終了点から右に出て直上して帯状ハングの弱点箇所(ハングと言うより垂壁より若干傾斜しているぐらいのところ)からを乗越す。ハングを乗越すと傾斜のあるスラブを右上する。ハングを乗越すところは岩が脆いので気を使うが思っていたよりは難しくはありませんでした。
・残置中間支点はそれなりにあります。
・ロープスケルは30~35mぐらい。
・終了点はハンガー1つとリングボルト2つと残置ハーケン1つ。

【5P 階段状のスラブを左上 Ⅲ】(リード:岸畑)
・トポのカンテを直上(40m)はどこのことなのか?よくわからなかった。(4P目の終了点の位置がそもそもトポと違うようなので仕方ないかな。)
・スラブを左上する。特に問題なく登れます。
・残置中間支点はほぼ無し。
・ロープスケルは25mぐらい。
・10mほど登ったところに終了点があったが今回はここでピッチを切らなかった。(中間支点としては利用した。)
・終了点は熊笹帯下の岩のクラックにカムとナッツで構築してあったが全員が登り終え全員がセルフを取ってから次の準備のためにハンギングしようと山宮が荷重したら岩が動いてカムとナッツが外れて終了点が崩壊した。(詳しくは感想で書いてあります。)崩壊後、熊笹をまとめてスリングを巻き支点とした(4~5箇所ぐらいから)また動いた岩に気休めに再度カムをセット、更に右にあった微妙なリスにハーケンを打ち足してバックアップとした。(ハーケンは根元まで入らず半分ぐらいしか入ってなかった。)

【6P~9P 階段状のスラブ Ⅲ】(リード:6~7Pは岸畑、8~9Pは山宮。)
・トポ6P目の草付の凹状スラブ(100m)の区間を6~9Pに区切って登りました。
・この区間は階段状のスラブ登りで特に難しくありませんでした。
・残置は中間支点はほぼありませんが、8Pだったか9Pだったかに多くあったような・・・(忘れました。)
・6P目の終了点は5P目終了点から8~10mぐらい登った足場の安定したところにある残置ハーケン1つにハーケン1つを足して終了点を構築。(この支点の上にリングの無くなったリングボルトの芯だけ残っているのでナッツがあればこれも使えます。)
・7P目の終了点は6P目終了点から25~30mぐらい登ったところにあるハンガー1つにハーケン1つを足して構築。(この終了点の2m左下に残置ハーケンが4つあったのでそこで終了点を構築してハンガーをバックアップとして使うのもありかも。)
・8P目の終了点は7P目終了点から25m~30mぐらい登ったところにある残置ハーケン2つで構築。
・9P目の終了点は8P目終了点から25m~30mぐらい登ったところにあるハンガー1つにハーケン1つを足して構築。

【10P ハング下を右のリッジへ Ⅲ】(リード:山宮)
・トポの7P目。ハング下から右上してリッジへ上がりました。途中傾斜のあるスラブが濡れていて悪い感じがしたので左の草付を登ってスラブへ戻りました。
・残置中間支点はそれなりにありました。
・終了点はハンガー1つに残置ハーケン1つと変わったリングボルト1つ

【11P 階段状のスラブ Ⅱ】(リード:山宮)
・トポ8P目の草付フェース(80m)の区間を11~12Pに区切って登りました。
・この区間は階段状のスラブ登りで特に難しくありませんでした。
・終了点から右に見えている階段状のスラブを少し登ると、左に傾斜の強いスラブ、中央に脆いリッジ、右に左より易しそうなスラブとなるので右のラインを選択し登りました。40~45mぐらい登って脆いリッジの上に出て灌木で終了点を構築しピッチを切りました。特に難しくはありませんでした。
・残置中間支点は下の方に1、2個あったかな?
・終了点は灌木2本からそれぞれスリングを巻いて構築。

【12P 草付スラブ~灌木帯 Ⅱ】(リード:Hさん)
・トポ8P目の草付フェース(80m)の区間を11~12Pに区切って登りました。
・この区間はフリーで行けそうでしたがHさんが岩が濡れてて嫌らしいと言ったのでそのままアンザイレンしてスタカットで登りました。(ロープを結び変えずにHさん、山宮、岸畑の順番で登りました。)
・残置中間支点は灌木で構築。
・ロープスケルは25mぐらい。
・終了点は灌木で構築。

◆中央壁正面フェース終了点~中央壁の頭~堅炭尾根
・中央壁正面フェース終了点でアンザイレン解除してロープを片付け中央壁の頭へ。中央壁の頭から少し歩いた平らなところで要らないギアを片付けクライミングシューズから沢靴に履き替えました。
・中央壁の頭からは藪漕ぎ&岩の階段登りで堅炭尾根まで登りました。

◆下山
・堅炭尾根は中芝新道を下りました。

※谷川岳登山指導センターの掲示板に中芝新道は廃道扱いとなっている書いてあります。笹が繁茂していて踏み跡がわかりづらいので夜間や霧などで視界不良の時に下山で使用する場合には道迷いに注意してください。

★感想:

(岸畑)ビレイ点崩壊という死亡事故に繋がるヒヤリハットがありましたが無事下山できてよかったです。避けられる不要なリスクは避けられるように技術、経験を積んでいかないといつかは死亡するなと思いました。無事だったからいえることですがいい経験ができた山行でした。

【幽ノ沢正面フェースビレイ支点崩壊インシデントについて】

①場所:幽ノ沢正面フェース トポ上7P目

②状況:カムとナッツで構築したビレイ点が崩壊し、3人落ちかける。

4P目終了点でHさんからリードを交代し岸畑が登る。少し上がったところにハンガー
ボルトがあったが、ロープの長さがまだあったためその場所ではピッチを切らず、上部草付きの岩場まで登る。足場が不安定であったがカムが決まったのでその場で支点構築をする。周辺のリスにハーケンを打ってみたがしっかりと決まる場所がなかったのでカムをセットした同じ岩にナッツをセットする。カムとナッツがきいてることを確認しビレイ解除のコールをする。セカンドでHさんが登ってくる。ビレイ点に着く。その際、流動分散について指摘される。サードで山宮さんが登ってくる。ビレイ点にセルフをとる。次のリードの準備を始めるために山宮さんがロープをまとめやすい体制になろうとゆっくりと加重をかけた瞬間、カムとナッツをセットしていた岩が動きカムとナッツが同時に外れビレイ点が崩壊する。即座に目の前にあった笹を3人とも掴み、滑落を逃れる。掴んだ笹をまとめ各々セルフを作成し、ビレイ点の再構築の作業を始める。Hさんが右壁上部に軟鉄ハーケンを打ち、バックアップとして動いた岩のクラックに再度カムをセットする。不安定な状況ではあるが、リードで岸畑が登る用意をして登り始める。10mほど登ったところに残置ハーケンがあり足場が安定している場所があったため、その場所にアングルハーケンを打ち足しビレイ点を構築する。(この時下の二人はできるだけ支点に負荷をかけないようしていた)山宮さんがセカンド、Hさんがサードで登ってきてもらった。

③原因:リードで登った岸畑の知識、経験不足。

④反省点:

・ビレイ点を作成する場所として不適切だった(しっかりハーケンがきくリスもなく足場も不安定であった)
・岩が動くことを想定できてなかった。(そもそも同じ岩から2つ支点をとること事態がNG)
・ビレイ点の強度チェックが不十分。

(山宮)岸畑さんからのお誘いで幽ノ沢へ行ってきました。お久しぶりのHさんを加えた3人で3人共初見の中央壁正面フェースを登りました。中央壁正面フェースの取付までのアプローチはぎりぎりまでロープを出さずにフリーで登る選択をしたら、気が付いた時にはすでに取付より高く登っていてしまい、結果中央壁正面フェースの1P目は登れませんでしたが、まー気にはしません(笑)ドンマイ!ルートについては帯状ハングから下の岩が脆かったですが、谷川らしいと言えば谷川らしいで片づきます(笑)クライミングに関しては難しくはありませんが、雨や染み出しで岩や草付が濡れてたら悪そうなので登らない方が賢明でしょう。中芝新道は荒れてますが視界があれば薄い踏み跡っぽいものがあるので何とか下りれます。が、やはり悪路です。岸畑さんの構築した5P目の終了点が崩壊するインシデントがあり危うく全滅するところでしたが運よく事なきを得て全員無事でした。熊笹地帯は足場が岩と泥のミックスで悪くセルフ取った後の次のピッチを登るための準備をするためには終了点に荷重してハンギング状態にならないと作業できない状況でした。(ハンギングすると足元はちょうど泥斜面になる。)熊笹を掴んでいれば足も岩の上に立ってられて安定していて終了点には荷重しなくていい状態でしたが両手をフリーにしないと作業できないので、熊笹を掴みながら少し荷重するとカムとナッツをセットしていた岩が動いてカムとナッツが外れ終了点が崩壊しました。その時、他のメンバーもまだハンギング状態じゃなかったようで誰も墜落はしませんでした。足場が微妙な感じだったのが逆に幸いして大事故には至りませんでした。終了点を見て『ん?』と違和感があって強度を確認したい場合はメンバーにその旨を言って安全な体制を取ってもらってから確認するのが良いと認識しました。(仮に終了点が壊れても墜落しないようにする。)

★山行の詳細はヤマレコにアップしてあります。

https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4833244.html

カールボーデンへの登りは登れそうなところを好きに登る
カールボーデンに到着
右俣リンネのラインの左にある傾斜のあるリッジ状をフリーで登る
岩~草付を真横にトラバースして中央壁正面フェースの1P目終了点を目指します
2P目終了点に到着したHさん
3P目をリードするHさんを2P目終了点から見上げる
3P目の最後の脆い岩を右へ行くところ慎重に登ってくる岸畑
4P目のハングをこなして鼻水をすする山宮(花粉かな?)
5P目終了点でビレイする岸畑と5P目を登るHさん
5P目終了点(支点崩壊後に再構築したもの。写真でリンクカムを決めている岩が動いてリンクカムとナッツが取れた・・・)
8P目を見上げる
10P目をリードする山宮
12P目終了点でビレイするHさん
12P目終了点でアンザイレン解除してロープを片付け中央壁の頭へ藪漕ぎしてます
中央壁の頭へ登ってくる岸畑と山宮
堅炭尾根の中芝新道に合流して余韻もなく早々に下り始める
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投稿者: 新潟クライミングクラブ

新潟クライミングクラブは新潟市にある山岳会です。「角田山からヒマラヤまで!!」を合言葉にアルパインクライミングを中心に活動しています。

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